- おしらせ
日常の生活で身体に感じる【痛み】は、身体で何か不具合が起きていることを知らせるためのサインです。その【痛み】は慢性化することで、思うように身体が動かせなくなる不満や今後の仕事、生活においての不安が生じてしまうほど不快な感覚です。
国際疼痛学会(IASP)では、【痛み】とは、「組織の実質的あるいは潜在的な障害に伴う,あるいは,そのような障害を表す言葉で表現される不快な感覚あるいは情動体験」と定義されています。
そんな【痛み】がどのように起こり、どこで感じているのか?どんな種類があるのか?などを詳しくご紹介したいと思います。
受容器 → 受容体 → 一次求心性神経 → 後根神経節 → 脊髄 → 神経、脊髄視床路など → 脳
痛みを発生させる受容器は侵害受容器(痛覚受容器)と呼ばれ、2種類あります。
①高閾値機械受容器(特定の痛み刺激に対して反応):有髄性の神経(Aδ線維/太い)を介して素早く脳へ伝ります。(鋭く痛みの部位が明らかな一次痛)
②ポリモーダル受容器(機械刺激、熱刺激、化学刺激などの刺激に反応):無髄性の神経(C線維/細い)を介してゆっくり脳へ伝わります。(鈍く痛みの部位が不明瞭な二次痛)
侵害受容器は神経の末端が変化したもので、特定の受容器構造を持たない自由神経終末であり受容体が捉えた侵害刺激を電気信号に変える役割があります。
【高閾値機械受容器】
侵害性の機械刺激にのみ反応する受容体が存在し、局在が明瞭な痛みに関与し、針で刺したりするような機械刺激に反応します。
【ポリモーダル受容器】
局在の不明瞭な痛みに関与する全身に広く分布する受容器(化学刺激や熱刺激、機械刺激など様々な受容体が存在)支配神経はC線維ではあるが、深部組織(骨格筋/関節/内臓)ではAδ線維である場合が多いです。
受容器の表面にあり、自分に関係した刺激や物質に反応するセンサーのようなものです。
痛みを起こす原因には熱刺激、冷刺激、化学刺激、機械刺激などたくさんあります。その中でどの刺激に反応するか決めています。
①高閾値機械受容器→侵害性の機械刺激受容体のみ
②ポリモーダル受容器→機械刺激受容体、プロスタグランジン受容体、
ブラジキニン受容体、、ASICチャネル、P2X/P2Y受容体などある
痛みを伝える神経は2種類あります。
①Aδ線維:鋭い痛み(1次痛)を伝える有髄性の神経→緊急性の高い痛みを伝える役割があります。
②C線維:鈍い痛み(2次痛)を伝える無髄性の神経→緊急性が低い痛みを伝える役割があります。
痛みが慢性化すると普段は触覚を伝えているAβ線維が痛みを伝えます。
神経線維は太さや伝導速度によってA〜Cに分類されています。
Aから順に神経線維は細くなり、神経線維は太いほど伝導速度は速くなる特徴を持っています。
痛みを伝える神経線維はAδ線維とC線維の2種類あります。
高閾値機械受容器からの興奮は有髄のAδ線維によって伝導され、速い鋭い痛み(1次痛)を伝えます。 Aδ線維は髄鞘を有しており、跳躍伝導が行われるため伝導速度は速い。
一方、ポリモーダル受容器からの興奮は無髄のC線維によって伝導され、遅く鈍い痛み (2次痛)を伝えます。C線維は無髄であるためAδ線維に比べ伝導速度は遅くなる。
痛みや触覚を伝える細胞体が集まった場所
痛みを監視する司令塔の役割があります。
神経が正常に働くのに必要な物質(細胞構成物質)や末梢(受容体)と中枢(脊髄)とのやりとりに使われる伝達物質、酵素などを作成し運ぶ役割があります。
痛みを整理して、脳に伝える。
脊髄は灰白質と白質からなります。灰白質は(前角/側角/後角)に分けられます。
痛みを伝える神経は後角から入り、中にある侵害受容ニューロンに手渡されます。
①特異的侵害受容器(NS)ニューロン:どこで痛みが起きたかを知らせる役割
②広作動域(WDR)ニューロン:刺激の強度を伝える役割
末梢から送られてきた情報は後根神経節を経て、脊髄に入ります。灰白質の後角で侵害受容ニューロンとシナプス接続します。
その後、シナプスを代えた神経が正中を横切り、対側の前側索を通り、脊髄視床路などへ向かいます。
脳へ痛みを伝えるルート
脊髄視床路:脊髄と視床を結ぶ。内側(旧脊髄視床路)と外側(新脊髄視床路)に分かれています。
その他に脊髄網様体路、脊髄中脳路、脊髄視床下部路などがあります。
・新脊髄視床路は直接視床に向かいその後、大脳皮質の体性感覚野に送られます。
・旧脊髄視床路は脳幹のいろんな場所を経て視床に向かい、その後大脳辺縁系に送られます。
大脳皮質の体性感覚野は痛みの感覚的側面を司ります。(痛みの局在性や強度・質)
大脳辺縁系は痛みの情動的側面を司ります。(痛い時に感じる不快感や悲しみ)
1:侵害受容性疼痛
損傷、炎症などを伴う痛み
2:神経障害性疼痛
神経の障害に伴う痛み
3:心因性疼痛
心理的な痛みを伴う痛み
侵害受容性疼痛とは組織の損傷や炎症に伴い発現した物質によって起こる痛みです。
侵害受容性急性疼痛:切り傷、火傷、打撲、捻挫、骨折、脱臼など
侵害受容性慢性疼痛:痛みの原因が明確であっても取り除くことができず、時間が経過し炎症が慢性化したもの
侵害受容器を刺激させるもの
①機械刺激:画鋲を踏んだり、指を切ったりしたときの痛み組織損傷することにより誘発される発痛物質や修復物質が痛みの原因。圧迫、引っ張られるなど組織損傷がなくても侵害受容器が直接刺激されることによる痛みも含まれます。
②熱刺激、冷刺激:43°以上15°以下になると起こる痛み極端な高温・低温の場合は火傷による組織損傷が起こり侵害受容器が刺激され痛みを起こします。
③化学刺激:刺激性の化学物質皮膚につくと損傷を起こす物質(塩酸、硫酸など)があります。
骨折に伴う痛みは、骨本体に痛みを感じる侵害受容器はほとんどありません。骨は骨本体(骨皮質と骨髄腔)と骨膜から構成されており、この骨本体では骨髄腔に多少、侵害受容器があるのみでほとんど侵害受容器はありません。
一方で骨膜には侵害受容器が豊富に存在します。つまり、骨折をした際、痛みを感じるのは、骨本体が痛いのではなく、破壊に伴う炎症や骨折に伴う機械刺激などで骨膜の侵害受容器が興奮し痛みを起こしています。
体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる痛み
傷や炎症などが見えないにも関わらず痛みがある
(例)
◯帯状疱疹が治った後の長引く痛み
◯手術や外傷による神経損傷
◯糖尿病の合併症に伴う痛み
◯坐骨神経痛・椎間板ヘルニア・三叉神経痛などの 圧迫性/絞扼性神経障害
◯自己免疫性疾患・腫瘍・ニューロパチーなどの変性疾患
明確な損傷や炎症がないにも関わらず起こる痛み
脳の認知異常によって起こる心(精神機能)ではない
①ゲートコントロール理論
②下行性疼痛抑制系
③鎮痛物質
痛みを感じると脳幹部から神経線維を伝って脊髄内を下降し、過剰な痛みの伝達を抑えるシステムがあります。この神経線維にはセロトニン神経とノルアドレナリン神経があり、セロトニン神経はセロトニンを、ノルアドレナリン神経はノルアドレナリンを放出し、痛みで興奮している神経の後角にある受容体でそれらをキャッチし、痛みに抑制をかけます。
神経伝達を抑制する物質は抑制性伝達物質(鎮痛物質)と呼ばれる。
・セロトニン
末梢では炎症に関与し毛細血管の透過性亢進作用を持ち、侵害受容器には発痛物質として作用する。
また中枢神経系では気分を興奮させる方向に働く。 このように侵害受容器には興奮性に、脊髄後角では抑制性に働く。
•ノルアドレナリン
副腎髄質から放出されるホルモン、あるいは交感神経から放出される神経伝達物質である。
中脳、延髄などからニューロンの終末で放出され脊髄後角の侵害受容ニューロンを抑制する。
•GABA
などがある