本稿は、Emaps株式会社の独自臨床モデル「ブレシア®(brascia®)」の設計思想を解説するシリーズです。ブレシア®の正式定義・評価基準・用語の一次情報は原典ページに集約されています。本稿はその概念を「神経状態のスクリーニング」という視点から展開し、3ブランドの臨床実装との接続を整理します。
なぜ「同じアプローチ」が効く人と効かない人がいるのか
臨床現場でよく起きる問題があります。同じ症状・同じ手技・同じ強度で施術しても、変化が出る人と出ない人がいる。なぜか。
その答えのひとつが、介入前の「神経状態の違い」です。身体が変化できるのは、神経系が「安全だ」と感知しているときだけです。ブレシア®の最上位思想「身体は、『安全』なときにしか変わらない」は、この原則を指しています。
どれだけ精度の高い手技を行っても、神経系が「脅威モード」にある状態では、身体は変化を受け入れません。介入の前に神経状態を評価し、今どのモードにあるかを確認することが、ブレシア®の臨床設計の起点です。
ポリヴェーガル理論に基づく3タイプ分類
ブレシア®は、ポリヴェーガル理論(Stephen Porges)の知見を臨床に統合しています。施術前に患者の神経状態を3タイプで分類し、介入設計を最適化します。
Type A(交感神経優位型)
Social Engagement System(腹側迷走神経)が使えない状態。過緊張・過警戒・不眠・常に疲れているという特徴があります。介入の方向性:リセットを丁寧に。安全の入力を積み重ねます。
Type B(背側迷走神経シャットダウン型)
凍りつき・虚脱状態。やる気が出ない・解離感・慢性疲労・感覚鈍麻という特徴があります。介入の方向性:微細な安全刺激から始めます。副交感神経の「強化」は逆効果になる可能性があります。
Type C(腹側迷走神経優位型・目標状態)
Social Engagement Systemが活性化した調整状態。身体が変わりやすい・回復が速いという特徴があります。介入の方向性:学習・定着フェーズへ積極的に移行できます。
臨床上は、A+B、A+Cなどの混合型も多く見られます。ニューロセプション(身体の安全感知システム)の状態を評価し、どの神経モードが優位かを判断することが先決です。
スクリーニングの実際——何を見るか
神経タイプのスクリーニングは、問診と身体指標の組み合わせで行います。問診では、睡眠の質・疲労感の種類・感覚の過敏さ・意欲の状態を確認します。身体指標では、眼球運動・VOR(前庭-眼反射)・顎関節・バランス反応・呼吸パターンを評価します。
これらの指標は、ブレシア®の4軸評価と対応しています。軸①(脳幹・脳神経経路)の評価が神経タイプの判断に直結し、軸③(大脳辺縁系・視床下部)・軸④(島皮質・内受容感覚)の評価がHPA軸・内受容感覚の状態を補完します。
タイプ別の介入設計とSIPプロセス
神経タイプが確認できたら、SIPプロセス(スタッキング→インテグレーション→プライミング)の設計が変わります。
Type Aでは、スタッキングの段階で「安全の入力」を最優先とします。強い刺激や痛みを伴う手技は避け、軽微な感覚入力から始めて防御反応を解除します。Type Bでは、副交感神経を直接「高めよう」とするアプローチは逆効果になる可能性があります。まずニューロセプションが安全を感知できる条件を整えることが先決です。Type Cに到達したとき、インテグレーション・プライミングへの移行が可能になり、変化の再現性が高まります。
3ブランドでの実装——神経タイプ評価の臨床展開
神経状態のスクリーニングは、3つのブランドでそれぞれの専門領域に応じて実装されています。
- リリーフポート整体院(頭部慢性状態領域):軸①を中心に、眼球運動・VOR・顎関節評価から神経タイプを判断します。慢性頭痛・首こりの背景にある三叉神経核の過活動は、Type Aの神経状態と深く関連します。
→ 三叉神経と頭痛|脳幹への感覚入力が過剰になるとき - リリーフポートフェミナ鍼灸整体院(内受容調整領域):軸③・軸④を中心に、HPA軸・内受容感覚・島皮質の処理状態から神経タイプを判断します。女性のホルモン変動がType A・Type B間の移行を起こしやすくする背景を整理します。
→ ポリヴェーガル理論と女性の不調|神経状態の3タイプ分類 - てあつい整体院(運動器機能管理領域):軸①②を基本に全Layer評価を行い、慢性腰痛・坐骨神経痛における中枢性感作の状態から神経タイプを判断します。下行性疼痛抑制系の機能状態がType Aの評価と直結します。
→ 坐骨神経痛と中枢性感作|痛みが慢性化する神経の仕組み
ブレシア®の正式な定義・4軸・SIPプロセス・5Layerモデル・3タイプ分類・機能ユニットの詳細は原典ページに集約されています。
▶ ブレシア®(brascia®)原典ページ
ブレシア®の入門解説はこちらです。
▶ ブレシア®入門ガイド|まず理解するための解説
※本稿はEmaps株式会社が運営するコーポレートメディアの記事です。
